生産者さんインタビュー 同じカタチに育つものはひとつもない『でこぼこファーム』さん

今回湘南たべまな便でお届けする橙(だいだい)を育てているのは、湯河原でご先祖様の荒地を受け継ぎ柑橘農家となった「でこぼこファーム」の竹原さん。
会社員として長年働いてきた竹原さんが、湯河原の地で農家になったきっかけや、「でこぼこファーム」という農園名に込めた想いについてお話しを伺いました。
夫婦そろってこどもの頃の家族の想い出
「湯河原の柑橘畑の原風景」を残したい
ー元々湯河原のご出身でいらっしゃるのですよね。農業にはご縁があったのですか?
父親はサラリーマンで農業を全然やってなくて。おじいちゃんが湯河原のみかん農家だったのですが、小学校1年生の時くらいに亡くなって、その後、畑は母親とおばあちゃんのほとんど2人でやっていたのですが、男手もないのでどんどん縮小していって…
僕はその当時知的障害者の方を支援する仕事を15年ほど続けていて、会社員だったんです。
でもある日たまたま母親に、何かを片づける用事を頼まれて久々に畑に行ったらものすごく荒れている光景を目の前にして、びっくりしたと同時に残念で…。
僕のこどもの頃の思い出の原風景を綺麗にしたい、残していきたいと思ったのが始まりですね。

新しい時代を作る先輩農家との湯河原の柑橘農家は
5年10年でグッと減るだろう
今、湯河原の柑橘栽培は80代オーバーの方がギリギリ続けている状況で、ここ5年10年でグッと減るだろうな、と。
継承する人もいないでしょうし、僕はレアなパターンなんです。
湯河原は立地的に特殊で、愛媛や小田原に比べても斜面が急で道も狭く、作業していくのに機械化が難しい地形です。
人がやらなければならない。
結果的に、美味しい果物になる。
だからこそ残していきたいんです。


名前に込めた
「でこぼこ」への想い
ー 「でこぼこファーム」ってすごく、親しみがありますよね。お名前に込めた意味は?
市場に出すと果実や野菜はA品B品、形の悪いものは弾かれていく仕組みになっていきますが、いわゆる凸凹しているものも、食べられるものであること、新鮮でおいしいことは間違えないんです。
価値をわかってくださる方に
届けたい
もともと知的障害の方の支援の仕事をしていたので、発達の凸凹なんて言ったりするんですね。でも人間の特性であるからダメなところではなくて、それぞれ強いところに光を当てていけば、社会で自立して生活していけるという支援をずっととしていました。やっぱり果物や野菜も同じで。
新鮮であればおいしいのは間違い無いので、形が悪くたって、価値をわかってくださる方に届けたい、知ってもらいたい、そいういう思いがかなりありますね。なので、でこぼこファームという名前にしました。

ー 次に挑戦していることはありますか?
僕がやってる吉浜芋は、地元の方もほとんど知らない地の野菜。小学校の給食でここ何年か使っていただいて、こどもたちに”野菜といえば?”と聞くと”吉浜芋!”という名が出てくるほどになってきています。 これから借りる畑が吉浜小学校の近くなので、できればそこで、小学校のこどもたちと栽培と収穫まで一緒にできたら素敵だなと思っています。

同じカタチに育つものは
ひとつもない
ー人や果樹と接する中で、似た部分があると思うんですけど、こういう部分が似ている
なと思うことはありますか?
やっぱりその、なんていうのかな、同じカタチに育つものはひとつもないんです。例えば柑橘の木なんて教科書を見ると3本で仕立てて、それぞれ枝が出てくるなんて書いてあるんですけど、そんなに綺麗になるものなんて1つもなくて、全部違うとこから枝が出てくる。やっぱりこれが個性だなって思いますね。


インタビューを終えて
ー今日お話しをお伺いしていたら、失敗やチャレンジを楽しんでいらっしゃるような印象なのですが、小さい頃からそんな子だったんですか?
や、全然ですよ。農業をはじめてからですかね、やるしかないですからね。
日々、次は何をしよう、どうやったらいいのかトライ&エラーの繰り返しで、それが楽しいんです。
ーえ、それって農業が性格を変えたってことですか?
確かに、そういうことかもしれませんね。それに、毎日この景色を見ていると単純に最高だ、って思います。

取材協力:でこぼこファーム竹原様
▼でこぼこファーム ホームページ
https://decobocofarmyugawara.stores.jp/
▼でこぼこファーム instagram
https://www.instagram.com/decobocofarm.jp/
