生産者さんインタビュー湘南に残された、ただひとつの酒蔵『熊澤酒造』さん vol.1
明治五年創業、湘南に残された、ただひとつの蔵元「熊澤酒造」。六代目 ”茂吉”さんに学ぶ、重ねてきた歴史を振り返り、次の世代におくるということ。
湘南熊澤酒造といえば湘南地区の食文化を牽引し、常に新しい風を吹かせているような、そんなイメージがあった。しかし、実際に茂吉さんにお話を聞くと、長い歴史の中にすでにあった人々の営みや知恵を、今の世の中にもう一度花咲かせているのだということを知った。
おばあちゃんの時代
ここは徳利を持って
人が集まる場所だった
ー 熊澤酒造さんといえば、蔵を生かした粋なレストランや、ハイセンスなラベルのビールの醸造など、常に新しいことに挑戦しているイメージでした。
「ゼロイチというよりは、歴史ってスパイラルで繰り返されていくので、新しいっていうのは、変わっているから新しく見えるんだけど、レストランも、先々代のじいちゃんばあちゃんの話を聞く機会があって。
うちのおばあちゃんが嫁いできた頃、大正初期ぐらいはみんな貧乏徳利(とっくり)って言って、農家の各家の徳利を持っていて、畑仕事や田んぼ仕事が終わると自分ちの徳利を肩にしょって酒蔵に来て、お酒をくんで帰る。そういうことをやっていると、隣の人が来て、久しぶりにちょっと飲むかとなるんです。それでうちのおばあちゃんが、つまみとかアテを出しているうちに、宴会っぽくなって。」
「僕が入社した頃は、食品工場として作った商品を全国に発送する工場だったけど、ここはもともと地域の人が集まってきて、何かが生み出されていく場所なんだと気づいた。それを平成の時代に復活させたというのがレストランなのです。」
僕の世代の感覚で、
過去になくなってしまったものを
もう一度再編集している
ー 今、熊澤酒造にこんなにも人が集っているのは、今の時代の人が求めているものとマッチしたからでしょうか?
「僕の世代の感覚で、過去になくなってしまったものをもう一度再編集しているということなのかな。流行っている商業施設とかは、少し語弊があるかもしれないけど、海外であったり色々なところで流行ってきたものをコピペしてきている。僕らは同じ新しさでもちょっと違う文化。」
地面から生えてきたような
そういう農的な取り組みを
僕らはしたい
「僕らはどっちかというと、地面から生えてきたものが枯れて、また春に咲いてきたみたいな新しさ。そういう農的な取り組みを、僕らはしたい。」
長い歴史の中で
色々と危機があって
それを乗り越えたり
また時代の大きな変化で
新しくチャレンジしたりということがあっていつの間にかなくなってたりする。
そういった長いものを
一個一個その時代に合わせて
取り組んできたのが
僕たちがやってきたこと。
日本が急激に変わっちゃったのって
歴史的にはすごく短い期間。
今の状態が決して普通なわけじゃない。
過去が全て良かったわけでもないけど
脈々と伝わってきたものを
もう一度見直す
タイミングなんじゃないかな。
取材協力
熊澤酒造株式会社
HP:https://kumazawa.jp/
instagram : @kumazawabrewing